「要介護者がコロナ濃厚接触者の場合の対応について」奈良県広陵町議会2022年3月
広陵町議会、2022年度3月定例会のちぎた慎也の一般質問の1問目「要介護者がコロナ濃厚接触者の場合の対応について」のやりとりです。
凡例
ち…千北
町…町長
福…福祉部長
目次
質問事項
要介護者がコロナ濃厚接触者の場合の対応について
第1回目のやりとり
質問事項
- 上記事例につき、広陵町の新型コロナウイルス感染症に関する対策会議、において議論がされたか。
- 今後同じようなケースが発生した際にどのように対応するか。
- マニュアルで対応できない制度の狭間の事例が出てきた際にどのように対応するか。
質問の背景
ポイント
- 家庭内で母親の介護をしているご夫婦がコロナに感染した
- 要介護の母親は濃厚接触者となってしまったことで介護施設への通所などは断られてしまった
発言内容(千北)
先日、町内の方から、次のようにご相談いただいた。
夫婦ともに新型コロナウイルス感染症に感染してしまった。家では、介護が必要な母親がいる。検査の結果母親は陰性だったが、濃厚接触者と認定され、介護施設へのショートステイ等は断られてしまった。かといって、自分たちで介護をすると、コロナを移してしまう可能性があり、高齢でもあるので、感染リスクは避けたい。
担当のケアマネジャーさんや町の職員さんに相談しても、以上のような対応で、途方に暮れてしまったとのこと。保健所からは、自宅待機するようにショートメールで連絡がきただけで、なかなか事情を詳しく説明する機会もなかったとのことだった。このように、情況が刻々と変化する中では、既存のルールや保健所の判断だけでは対応できない制度の狭間の事例が出てくるように思う。そこで、下記の点につき、質問する。
第1回目の答弁(町長)
ポイント
- 感染症に対応するためには、感染症法に従い、国や県の指針に従い、保健所からの指示を仰ぐべき
- 濃厚接触者の場合は介護保険のサービスの利用が難しい
- 一旦、療養施設に入り、自宅待機期間終了後であれば、介護サービスを受けることができる
答弁内容
町)一つ目の議員ご紹介の事例に対して新型コロナウイルス感染症対策本部会議において議論がされたかとのご質問にお答えいたします。今回の事例については、対策本部会議におきましても議論をさせていただきました。感染症という特殊な状況の下では、感染症法に従って感染拡大防止策に努め、国や奈良県の指針に従い、保健所からの指示を仰がざるを得ないと判断させていただいたところでございます。
二つ目の今後同じようなケースが発生した際にどのように対応するかとのご質問にお答えいたします。
新型コロナウイルス感染者がご自宅で療養されている場合は、介護事業者への感染リスクが高いことから、介護保険のサービスのご利用が難しい状況となります。感染者が療養施設等での療養に移られたことで、濃厚接触者や介護者などへの感染リスクが低下することにより、訪問介護や訪問看護などの介護サービス利用が可能となりますので、保健所の指示に従い健康状態にご注意いただきながら、その方に応じた介護サービスのプラン作成をケアマネジャーとご相談いただくこととなります。
三つ目のマニュアル対応できない制度の狭間の事例が発生した場合の対応についてのご質問にお答えいたします。
先に申し上げましたとおり、新型コロナウイルス感染症は感染症法により、対応が定められております。感染が判明し、保健所からの連絡に時間を要する場合は、その間ご本人もご家族も大きな不安を抱えながら過ごされることは充分に理解いたしております。今後も国や県の指針を受け、本町としてより正確に住民の皆様に情報をお伝えし、また相談をお受けした際には、的確な説明ができますよう努めてまいります。
2回目以降のやりとり
今回のケースで現状どのような対応が可能だったか
ポイント
- 介護保険制度は基本的には住んでいただく地域で健康に暮らしていただくことを目指す
- 今回のケースでは、事情を聴いた上で、要介護者の母親が療養施設に入れないか検討できた
発言内容
ち)ご答弁いただきましてありがとうございます。それでは2回目以降の質問に入っていきたいと思います。まず最初のですね、要介護者がコロナ濃厚接触者の場合の対応について、というところで、再質問をさせていただきたいと思うんですけれども、ちょっとですね、私が考えていた2回目以降の質問に入る前に、午前中の坂野議員の一般質問でのやり取りでですね、町長のお考えとして、介護が必要な方であっても、可能な限り家で見ていくような方針だと聞いてます、というような発言がありました。実際そこに関しては坂野議員の一般質問の趣旨とは外れていたので、特に議論されてなかったと思いますけれども、そういった方針はお持ちだということはそのように考えておいてよろしいでしょうか。
町)介護保険制度というのは施設での介護を目的とするのではなしに、住んでおられる地域で健康で暮らしていただく、というのが基本になってございますので、また高齢者ご本人も、やはり生まれ育ったという、長年生活を続けておられる地域で、友達と一緒に、健康で暮らし続けたいという願いは皆さんお持ちだと思います。最終の亡くなられるということはもう100%なんですが、それでもやはり自宅で家族に見守られて、息を引き取るというのは本当に理想の形だというふうに思っておりますので、到達点は、最後そこまで家族が介護できるかどうか、というところですので、その支援をいろんな訪問介護や訪問医療、訪問看護等の色々な仕組みを使っていただいて、在宅で暮らしていただくというのは一番理想だというふうに思っておりますので、町としての方針というよりも、国もそのように方針を掲げているというふうに思います。施設介護は最終の手段ということになるという考えでございます。
ち)ありがとうございます。おっしゃっていることは非常に私も共感できる部分で、2回前ぐらいの一般質問でもヤングケアラーのことを取り上げさせていただいた時に、私の家庭でも祖父の面倒を見てたという話もさせていただきました。最後の3年ほどはですね、施設に入ってしまって、やっぱり家から出ると、なかなか関わる機会もなくなってきて、施設に入ってから、悪くなるペースも早かったのかなと思っております。ですので、可能な限り家で見ていくってことは必要なのかなと思っております。
その点も踏まえて2回目の質問に入らせていただきたいんですけれども、今回のケースは、先ほどもお話しをさせていただきましたけれども、できるだけ、やっぱり面倒を見ようというところで、ご家庭での介護というの頑張って頂いていて、まあ仕事のこともあり、さすがに家で面倒を見るのもしんどいかな、と思っていらっしゃったそうで、実際に施設の方に入っていただくための手続きというか、見学とかをされてたそうです。お母さんが納得されたら、施設に入ってもらったらいいかなというところまで考えてらっしゃったそうなんです。
しかし、そのタイミングで現役世代の二人ともがコロナにかかってしまった。今回のケースのミソというか一番難しいな、と思ったポイントはですね、要介護者であるお母さま自体はコロナにかかっていない、というところだと思います。ご答弁いただいた内容にも2段階ありまして、やはり濃厚接触者の方は施設等で受け入れることができない、ということ。そしてそれは、基本的には感染症法に基づいて指導が作成されて、それぞれの施設さんでもそのように運用がされている、というお答えと、今後同じことが起こったときの対応として、療養施設に入られれば対応ができる、というお話でしたけれども、今回の場合は、濃厚接触だけでしかなくて、要するに医療的な筋はですね、最初から使える性質のものではなかった、という点なんですね。しかしながら、他の人の手がなければ、家で自立した生活を続けていくのは難しい、という状態であったのは事実で、そういう状況で、じゃあどうすれば良かったのか、というところをきちんと考えていく必要があるんじゃないか、ということを問題提起をさせて頂いたというところです。実際に色々な制度の壁や民間企業でできることできないことはあったと思うんですけれども、要介護者の方が濃厚接触者になってしまって、家での待機しかできないっていうこの状況そのものに課題意識を持たれているか、という点についてまずは確認させてください。
福)今おっしゃっていただいている通り、濃厚接触者で要介護になられている方についても、自宅待機になるというのは認識をさせていただいております。今回このような事例が発生して、保健所等とも、どのように取り扱えばよかったのか、という点を再度検証させていただきました。色々な家庭がある中で、家族全員が感染される場合もあれば、何人かが感染されなくて、別々に生活をされるということもありますし、同時にではなく、順々に罹っていかれる、というケースもあり、同じ家族の中でも、濃厚接触であったり、陽性者であったりと、立場が色々と変わっていくようなケースもございます。保健所の対応につきましても、蔓延期に入ったときにはかなり混乱をしていて、なかなか連絡をすることができないような状況になっていて、一番長い時ですと、4日ほど経たないと連絡がこなかったというような方もおられます。今でしたら、少し体制が整っていて、2日ほどで連絡が来るようですが、週ごとに保健所の対応も変わってきているようです。そのような中で、この事例につきましては、ご連絡いただいた際に、まずは、内容をこちらの方が聞き取れていなかった、相談を受けた側が聞き取れていなかった、というところがございますし、ご本人様方も不安の中で、施設に入れないのはなぜか、というところだけを訴えておられたというところもございまして、施設の方は、感染予防のため受け入れることができない、となっておりました。そのあたりの内容をきちんと把握させていただいて、どのように整理をして、濃厚接触者はどのようにすればよかったのか、という点をしっかりと整理をしながら相談に乗れるような体制を町としてはとっていきたいという風に考えております。(濃厚接触者が)施設に入るのは今も無理なところでございますが、そのときに、療養施設にその方々がいけて、こちらから訪問介護であったりができれば、それは一つの解決策であったように思いますので、そのあたりの相談を、お話をきちんと整理した上でお受けできるような体制作りを町としては行っていきたいと思います。
ち)ありがとうございます。北橋部長の方もですね、非常にケースが難しいことが分かるけれども、なかなか打てる手がないというところで、様々苦慮された上での今のご答弁だったかと思います。ありがとうございます。やはり難しいなと思うのがですね、コロナさえなければ、できるだけお家で頑張って面倒を見ていただいくということはですね、家族のためでもありますし、介護されている当事者の方のためでもあったようなことではないかと思います。しかしながら、今回のケースでいうと、オブラートに包まず言えばですね、早く諦めて施設に入れていた方が良かったと、要するに施設の中で濃厚接触になった場合はですね、施設の中でうまく対処しているわけですので、頑張って(自宅で介護してい)たのになんでなん、という感情的な部分が出てしまうのは仕方ないところかなと思います。
今後どのような体制整備が考えられるか
ポイント
- 県や国とも協力し、体制整備を行って欲しい
- 県等に対しては、様々なケースに対応できるような施設や事業者の確保を行ってもらえるように要望していく
発言内容
ち)その上でですね、答弁書の中にも記載いただいておりますようにですね、ご相談いただいた際にしっかりと説明をしていただく、というところはもちろんなんですけれども、やはりですね、そういうご家族さん、本人さん含めてですね、そういった努力をきちんと受け止めてあげられるような仕組みっていうものがあるべきなんじゃないかなと思います。
そしてそれがですね、もしかすると、町だけではできないこと、あるいは町がすべきではないこと、というのも含まれているかもしれません。また、民間企業に手伝っていただかなければならないことや、あるいは、県と連携しなければできないこと、というのもあるかもしれません。もしかすると、やはり法律を変えてもらうというか、そもそもの新型コロナウイルス感染症に関するですね、類型を変えてもらう、という話にもなってくるかもしれないんですけれども、やはり既存のシステムを運営していく中で課題が生じた際には、きちんとそれをフォローできるような対策をとっていただきたいというのが正直なところです。
そして、先ほどから縷々ご説明しているケースで、こういう対応が今後取れないかな、というところなんですけれども、一つがまさに先ほど部長がおっしゃったようにですね、病院や高齢者施設とは別の形で、濃厚接触になった方を隔離しておけるような施設を県あるいは市町村が作っていく。そして、必要な時にはそこに介護スタッフ等を派遣して対応していく、ということができるのかできないのか、というのが一つ。もう一つがですね、実際別の箱を用意して隔離をしていただくということが難しいのであれば、自宅の中で可能な限り隔離をしていただいて、別の方がなんとか介護をする、ということかなと思います。今回のケースでいうとですね、身内の方が何名かおられて、なんとか大変な思いをしながら、介護はギリギリのところで続けていただいたようですけれども、そういった頼れる方がいないというケースもあり売るかと思います。八尾議員の質問にもありましたけれども、サポートパックというものが広陵町の中で実施されているわけですが、それの延長戦というかですね、そういった文脈でですね、補助が必要な方、サポートが必要な方に自宅療養中の方であっても、何かしら手を差し伸べられるような仕組みを作ることもできるんじゃないかなと思うんですけれども、そういった2点の対応は考えられないでしょうか。
福)障がい者の方や高齢者の方であったりとか、介護がどうしても必要な方がいらして、介護者の方が陽性になったケースについては、県の方ではそういう方を受け入れるように、ということで、事業所等に働きかけをしていただいておりますし、実際に感染対策をして受け入れていただく事業者というのもございますので、その辺はケースに応じながらの対応を保健所の方もしていただいているという状況でございます。今回はその相談もなかなか通じなかったっていうところもございました。多分相談を受けられたら、そういうところに繋がった、というところもございました。ゼロではなく、多くがあるわけでもなく、それが公開されているわけでもないですので、事業所ごとに対応いただいているような形になります。また、サポートパックにつきましても、はじめは食料品だけを入れておりましたが、マスクや手袋であったりとか、除菌シートなどの感染症対策用品も入れさせていただいて、濃厚接触者の方向けのチラシも同封しております。保健所の方からはなかなか連絡がこない、という状況もございましたので、町として、こういうことを参考にしていただければ、ということで、期間等を見ていただければ、ということで、チラシを途中から入れさせていただきました。
ち)非常に短い期間の中でコロナに対応するための仕組みづくりが国の方でもなされて、地方自治体に展開されているわけですので、一定程度穴がある部分はある程度仕方ないと考えております。ですので、今部長がおっしゃったようにですね、その都度具体的なケースを検証して、しっかり声をあげて、必要があれば県とも共同しながらしっかりと仕組作りを行っていただけたらと思います。
今申し上げたように、今作り上げたルールですね、そもそもですが、感染症法においては、新型コロナウイルス感染症法が発生する前から存在していた仕組の中で運用をしているわけで、それは時間もありませんでしたので仕方がない部分もあるかと思いますが、なかなかやはりカバーできない範囲が多いのではないかと思います。もちろんですね、基本的には自治体としては、回答にもありましたけれども、県や国、保健所の指導をいただきながら対応していく、ということになってくるかと思うんですけれども、やはり、それは違うだろう、というケースが出てくることも往々にして考えられます。
例えば、近くでいうとですね、兵庫県の明石市長がですね、子育て世帯への臨時特別給付金の件に関して、政府の給付方針がおかしいのではないか、という風なことも声を上げられておられました。様々なところでですね、やっぱりこれおかしいんじゃないか、という点が今後も出てくることが考えられます。基本的にはですね、厚生労働省などから指導や通達等があって対応していくというところですけれども、地方自治体と国はですね対等に議論ができるような状態ではあると思われますね。ですのでやはりですが、制度の狭間があった場合にはですね、市町村としてもしっかりと拾い上げていくということはですね、SDGs未来都市として認定されている広陵町としてはやはり果たすべき責務なのではないかと思います。その辺りですね、国からあるいは県から言われた通りにやるだけではなくてですね、制度の狭間の事例が出てきた際には、あげるべき声があればしっかりあべていく。そして、制度で足りてない部分は市町村としてしっかり拾い上げ対応していく、ということが求められることも出てくるかと思いますけれども、そのあたり町長いかがでしょうか。
町)このケースも担当の方から報告をもらった後、対策本部会議を急遽招集をして、議論をいたしました。中身は激論でございました。制度を守らなければならない、という意見と、やはり町独自の政策が打てるんではないか、というところで、本当に担当者と我々とで激論になったわけでございます。それ以上、制度の枠を超えて現時点では動けないという結論になったわけでございます。
幸い、病院にまず入院をされて、その後様子を見て、施設に移られる、という手順を踏んでいただいたというところで、この辺りの説明が十分できていなかったという風にも思います。まずは感染された方が、療養施設に入られて、分離をされた時点で、訪問介護が入れるということで、その辺りがしっかり説明できてなかったのだろうという気がいたします。その後、濃厚接触接触者として国が示す保健省が指定する期日、期間を過ぎれば、介護施設に入所ができた、という風にも思います。
ただ、その時も議論として出ていましたのは町でお医者さんを雇って訪問診療もできて、訪問看護もできて、訪問介護もできる、という状態を作れば、もう少し気分が安らいだのではないか、ということも申し上げておりましたので、とはいえ、今すぐできるわけではないので、その後その受け入れて頂ける、という予定の施設の代表の方とお会いした時も、そういう課題があって困ってますと。施設側でも受け入れていただけたらありがたいな、と申しておりましたが、やはり先に入っておられる入居者の方への感染を心配されるので、なかなか受け入れは難しいということになろうかと思います。
あと考えられるのは、どこかの施設で専用のそういうスペースを空けて頂いて、こういったケースを受けてもらう、というのを各市町村で準備する必要はなしに奈良県下で何箇所かあれば、十分対応できると思います。そんなにたくさん出てくるケースではないという風に思いますので、そういったこともやはり県にはお願いしていく必要があるという風に思っております。
ち)ありがとうございます。今回のケースはひとつの制度の狭間の事例だったかと思います。ただやはり今後ですね、新たな制度との狭間のケースが出てくるかと思いますので、まあ今おっしゃっていただいたようにですね、しっかりと今ある仕組みの中で出来る、最善の対応策をとっていただく、ということと、必要な別の策の構築を模索するということをですね、都度進めていただけたら良いかなと思います。ありがとうございます。それではですね、一つ目の質問を閉じさせていただいて、二つ目の部分に移っていきたいと思います。